【書評】アラフォー・クライシスを読んで

  • 2019年7月14日
  • 2020年5月13日
  • 書籍
  • 253view

 

こんにちわ。ritsuです。

NHK「クローズアップ現代+」取材班が新潮社から出版した「アラフォークライシス」を読みました。

就職氷河期世代と言われる35歳~44歳までの仕事・結婚・介護・家族問題をテーマにしています。

同年代である私はこの本を読み衝撃を受けましたので、こちらの本の感想を今回は書いていきます。

アラフォー・クライシスとは

バブル経済崩壊後の就職氷河期(1990年代半ばから約10年)に社会人となった、35~44歳の「アラフォー(「アラウンド・フォーティー」の略語)」世代の人たちが陥っている危機的な状態のこと。日本の労働人口の多くを占め、働き盛りでありながら安定した職に就くことが困難で収入が低い、正社員でも上下の世代と比べて給与が低く抑えられたり昇進が遅かったりする、これらの理由で結婚・出産できない、など問題は多岐にわたっている。

コトバンクより引用

アラフォー世代が就職する時代は、日本のバブル崩壊からデフレ不況により企業が新卒採用を控えた時期と丁度重なり、就職難となりました。

その結果フリーターや派遣社員などの非正規雇用労働者になる人が多い世代でした。

そしてそのような厳しい状況の人達が、20年経過した今でも厳しい状況に置かれており

それが仕事・賃金・結婚・介護など多岐に渡る実態を書いた書籍です。

アラフォー・クライシス「仕事編」

アラフォー世代は給与額が下がっていると、統計データで書かれています。

調査は2010年と2015年の大卒者・大卒院者の月収を比較し世代ごとにどのような変化があったかを一覧にしたものです。

NHK番組公式サイトより引用

何故35歳~39歳までの層と40歳~44歳までの層の給与がマイナスとなってしまうのかそれは

・非正規雇用者の割合が他の層よりも多いため、賃金が伸びない
・正社員でもアラフォーの一つ上のバブル世代がおり昇進・昇格が難しい
・就職氷河期や景気後退により職を転々としていた
・勤続年数が短い

これらが主だった原因として挙げられています。

例えば、35歳から44歳までの労働人口は2016年で約1500万人います。総労働人口は約6400万人になります。

全体の約23%を占めており、労働人口に占める割合が最も多い層です。

しかし35歳から44歳までの非正規雇用は約383万います。約25%を占めており、4人に1人は非正規雇用者という事になります。

日本と言う社会は一度非正規雇用者となってしまうと、正社員になるのが難しく国柄で非正規雇用がずっと続きそのまま年を重ねてしまった結果から賃金が一向に上がらない

と言う実態があります。そして非正規雇用者は正社員と比べ十分な教育や仕事が与えられずキャリアアップを図る機会もなく年を重ねる為、正社員になる事は難しいと言えます。

また正社員になっても、就職氷河期により自分の希望した職種・業種ではないため、数年経つと転職する人が多いのもこの層なんだそうです。

しかし、日本の会社の賃金構造は新しく入社する人よりも今いる社員の事を気にする風潮があり、転職しても賃金が上がらないケースが多いからです。

アラフォー世代は「就職氷河期」以外にも

2006年「ワーキングプア」

2008年「リーマンショック」

と激動の時代がありこれも賃金が上がらない、仕事が安定しないということの原因と言えそうです。

※ちなみにタレントの壇蜜さんも就職氷河期世代の一人で当時の状況を書籍に紹介されています。

アラフォー・クライシス「結婚編」

就職氷河期世代は「結婚」が出来ない世代とも言えると書いてあります。要点をまとめると以下の様になります。

・非正規雇用により経済力がなく結婚できない
・女性に多いのだが正社員になっても、仕事が精一杯で働きながら家事・育児ができるモデルケースがなく年を重ねていった
・男性の非正規雇用が増え女性に経済力を求めるようになり、未婚率が増えた
・結婚しても経済的余裕のなさや自分の不遇につき子供が産めない人が増え少子化に拍車をかけた
結婚は個人の自由で、自ら望んで結婚しないのならばまだしもいいです。結婚したくてもできないというのは、社会の構造からすると
元々終身雇用を前提とした昭和時代から平成初期においては、「職場」や「お見合い」で出会いがあり結婚することが普通でした。
しかしバブル崩壊とともに、その前提は崩れ「黙っていただけでは出会いがなくなった」「男性だけの収入では家計を支える事が難しい」という実態が出たが、
そういった「社会構造」が認識されるのは後の事、就職氷河期世代がそのことを認識したのが彼ら彼女らが30代・40代になってからだと本書では述べられています。

アラフォー・クライシス「介護編」

アラフォー世代は、未婚で親元で暮らすケースが多いと紹介されています。収入が上がらない、定職もままならいため生活費を稼ぐのも一苦労だからです。

しかし、親元で暮らしている親も徐々に高齢化し、アラフォー世代が介護をすることも珍しくないのだとか。

7040問題や8050問題など高齢の親を無職や非正規雇用で働いている息子・娘が面倒を見る。生活費が親の年金であることも少なくはないとの事です。

また無職や非正規雇用の息子・娘にも兄弟がいて、その兄弟が親が亡くなった後に面倒を見なければいけない。事もリスクだと書いてあります。

書籍には、取材した人たちの切実な声が書いてあります。中には親が亡くなったら自殺したいという声もあり、胸が痛くなりました。

介護の問題は誰にでも降りかかる問題ですが、介護する側の生活がままならないのに介護するというのは共に金銭的にも精神的にも追い詰められてしまいます。

アラフォー・クライシス「その他の問題」

それ以外の問題としては

★高齢の親が亡くなれば、年金がなくなり貧困やうつ病が蔓延→自殺者・犯罪者が増える
★未婚化の上昇により、少子高齢化のさらなる進展→社会保障の圧迫
★低賃金による消費意欲の抑制→GDPの低下要因

が挙げられています。

国や自治体も全く何もしていないわけではないのですが、なかなか社会復帰まで行くのは難しいようです。経済のグローバル化・IT化の進展が止まらないからだとも言えます。

個人的な感想

同じアラフォー世代として、いたたまれない気持ちになりました。

自分自身も新卒採用時に面接で70社近く受けて落ちた経験があります。そして苦労して入社した会社が「ブラック企業」だっとという本書に紹介されているパターンと全く同じでした。

その時の気持ちは、面接落ちすると自己を否定されているように感じ自信をなくし友人に合わせる顔もなく、団塊世代の親とは価値観の違いから自分の能力のなさを言われる始末でした。

私自身は本当に運よく、正社員となり高給取りとは程遠いですが何とか生活ができています。

しかし、一歩間違えればここに紹介されている方々と同じ境遇になっていたかもしれないと思います。

日本の社会の構造はいびつで未だに「新卒一括採用」「終身雇用」「年功序列」が残っている感はあります。つまりグローバルになりきれていない企業文化があります。

その一因として、社会構造上バブル世代よりも上の世代の意見が根強く残っている事が一因として挙げられます。

また、雇用の流動性が日本は低く、転職すると賃金が全体として見れば下がる傾向にあります。

社会保障に関しても、セーフティーネットが生活保護だけでは物足りない面があります。

「ベーシックインカム」を導入したり、住宅費・教育費・医療費を支給するなどの方策が必要です。実際の財源はまた別の問題としてありますが。

このアラフォー世代は生活が立ち行かなかったり、生活が苦しくても「自分も悪いから」「恥ずかしい・・・」「申し訳ない・・・」

と自分で自分を責めて助けを求めようとしない。とも記載がありました。

しかし現状を変えるには「助け」を求める「受援力」が必要だと書いてあり本当にその通りだと思います。

生活保護の申請をしっかりとするなどと言った事が書かれていました。

そして、非正規雇用や無職の人は孤独や悩み一人で抱えてを誰にも打ち明けられないので、同じような境遇のコミュニティや行政支援に顔を出し

ストレスを緩和する事が必要だとも書いてあります。

月並みな表現ですが、「お金」を稼ぐ事ができれば全ての悩みは解決できるのではないかと思います。

これは就職氷河期世代に限った話ではありません。

自らが稼ぐ人材になれるように日々努力をしていくことが大切なのだと痛感させられました。

     

最新情報をチェックしよう!